着物の格とコーディネート

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(更新中ですが参考になれば幸いです。用語は厳密ではないかもしれませんが一般的で、華会で使っている用語で解説します)

■男女共通の話

  • 着物は季節TPOにあわせて、着物・帯・小物の種類を組み合わせ、その日に着るものを選びます
  • 着物の世界ではTPOを「格」とよびます。
    • 季節とTPOにあわせるのは洋服と同じです。

なじみが薄いために難しそうに感じるかもしれませんが習うより慣れろ、です。
少しづつ、着ながら違いを覚えていきましょう。

(実はこのコーディネートがだんだん楽しくなって、はまってしまいます^^)

洋服を着るときも、

  • 気軽な外出
    • 着物の世界では、女性なら「街着・帯付き」・男性なら「着流し」と言う
  • ちょっとおしゃれなお出かけ・デート
    • 「おしゃれ着」
  • ドレスアップした盛装・披露宴やお茶会
    • 「略礼装/準礼装」
  • 挙式・式典など
    • 「第一礼装」
  • イベント参加はTPO次第

などシーンにあわせてを選び
あとは、クール・知的・ポップ・大人の色気、女性なら清楚・キュート、など
好みや作りたいイメージで小物を組み合わせ、
季節・気候にあわせて生地を選びますよね。

着物も同じ視点で選びます。
基本を押さえた後はぜひ色々なコーディネートを自由に楽しんでください。

以下、大枠から詳細まで、しつこいくらい細かく丁寧に書いてますので、ゆっくりじっくり読んで、実際の着物も怖がらず、ゆっくり楽しんでいって下さい♪

女性の着物は、織り、染め、絞り、刺繍、箔などで美しく装飾が施され、どれを見てもそれぞれに魅力があり、おそらく分かりにくいのは、素朴に見えるのに格が高かったり、豪華に見えるけれど実は格は低い・・・、といったところでしょうか。
格を知りつつ、上手に活かしコーディネートする、そんな着こなしができたら、素敵ですね!

格のことを最初に手短に書きますと、
「着物」の格は以下の4点で格を調整します。

  • 紋:数が多いほど格が高い(5つ紋>3つ紋>1つ紋):染め紋>刺繍紋(染め紋の方が格が高い。刺繍紋は「しゃれ紋」ともいわれる。)
  • 柄行き:「絵羽模様の着物」は格が高い:絵羽(総模様>肩裾模様>裾模様)・無地付け下げ(柄がすべて上向き)>着尺(一般に「小紋」のこと。柄が着物全体にまんべんなくあり、柄の向きは上下バラバラ)
  • 織りと染め:染めの着物織りの着物(織りの着物は普段着用)(織り=「紬(つむぎ:先染めの着物)」、染め=「小紋・後染めの着物」。羽二重(はぶたえ)>綸子(りんず)>お召→縮緬(ちりめん)>紬
  • 素材:絹、麻、木綿、ウール、化繊など(木綿・ウール素材は普段着用。絹や麻、化繊は上記3点による)

「女性の帯」の格は、袋帯名古屋帯、半幅帯、兵児帯とあり、形状が違うので着物より分かりやすいかもしれません。女性の帯の格は、おおざっぱに格の高い順に
袋帯:表地と裏地の2枚をあわせた長方形で4m20cmほど、金糸・銀糸・刺繍などによる豪華で華やかなもの。
名古屋帯:長方形の途中で半分の幅に縫い合わされている(この部分を「手先」という)、あるいは縫われていないが裏地がないもの。但し「袋名古屋」と呼ばれる袋帯のように仕立てた名古屋帯もあります。。。(また、名古屋でも、金糸・銀糸が刺繍などでほどこされているものは、格の高い帯として扱うことができる)
半幅帯:帯の半分の巾で、細長い長方形。浴衣などによく使う(普段着としてであれば着物にあわせてもOK)。
へこ帯:相当カジュアル。ふわふわで柔らかい生地。子供の浴衣によく使いますが、最近はキラキラおしゃれなものが沢山出てきて、若い女性に人気。

「男性の帯」は「角帯」が通常つける(浴衣にも締める)帯で、兵児帯(ふわふわとした布)はかなりカジュアルです。
 

着物の格とTPO(礼装・正装か普段着か。カジュアルな程度は?)にあわせてコーディネートします。

以下、項目に分けて少しづつ詳細を解説していきます。
(着物を着はじめると、あら不思議、感覚的にわかってきますので安心してください。)
着物・帯・小物の格を使い分けて、TPOを演出します。

具体的には着物は

:1つ紋(背中に1個)→3つ紋(1プラス前の両胸)→5つ紋(3プラス両腕)と格が上がり、5つ紋が第1礼装です。

    • 逆に5つ紋から順に数を減らして略礼装になっていきます。
    • 紋には染め抜き紋と縫紋(刺繍紋)があり、染め抜きの方が格上です。

柄ゆき

  • 「絵羽模様」の着物は、着物を広げて見た時に1枚の絵のように続き模様で絵柄があり、格が高い着物です。
  • 一方、普段着は、大雑把にいうと、柄が生地全体に「染め」や「織り」でまんべんなくあり、「小紋」「紬」と呼ばれる街着になります。

以下は絵羽模様の多い順に(絵羽のない普段着まで。男性も関係あるところだけ記載)。

  • 「振袖」は未婚女性の第1礼装です(絵羽で総模様。袖の長さが長いほど正装。大振袖(着用した時に袖がくるぶしまである長さ)・中振袖(膝くらい)・小振袖(現在はほとんどありません)とあります)。
  • 「黒留袖」・「色留袖」は既婚女性の第1礼装で、絵羽で裾模様。必ず紋を入れます。黒留は染め抜き5つ紋。色留袖なら紋を減らして作れば略礼装として幅広く着ることができます。
  • 「訪問着」は既婚・未婚関係なく着られる準礼装で、絵羽で、肩裾模様です。
  • 「付け下げ」は訪問着より格下で、上前から裾にかけて柄が続いています。訪問着と付け下げの区別が難しいものも多いです。
  • 「色無地」は紋を0から3つまでつけられます。紋の数が多ければ多いほど、未婚・既婚の礼装・略礼装として着られます。生地の地紋しかない(絵羽のない)一色の着物です。入れた紋の数で格の高さが決まり、紋が1つあれば、ほどほどの格がつき(略礼装になり)幅広く着られて大変便利です。男女とも、略礼装レベルの着物を1つ作るなら、1つ紋の色無地をお勧めします。紋の種類も洒落るなら、染め抜きではなく、縫い紋で、更に洒落紋(家紋でなく、好きな紋を刺繍して貰う)もいいと思います♪
  • 「江戸小紋」(単色型染めの着物)は略礼装にも街着にもなります(男女共通。1つ紋があれば略礼装としては尚可)。女性は袋帯を合わせて略礼装、名古屋帯をあわせれば街着に。色無地同様にお勧めです。元々大名・旗本・武士などの裃(かみしも)の柄だったことから他の小紋柄より格が高い扱い。中でも極鮫小紋の柄が格高。
  • 」(絹糸を先に染めてから織って、織りで柄を出す先染めの着物。織りの着物ともいいます)や「小紋」(白生地に型染め・手書き染めをする後染めの着物。染めの着物。)があり、一般的には着物は「染め」の方が「織り」ものよりも格上。織りの方がよりカジュアルという位置づけになります。(帯は逆に織りが格上

生地の「素材」や「織り方」でも格があり、格の高い順に

  • 素材なら 絹(着物の世界では正絹(しょうけん)と呼びます)・(夏は)麻→綿・ウール
  • 織りなら 羽二重→綸子→お召→縮緬→紬

【ご参考】
▼振袖は未婚女性の第一礼装です(現在は既婚者でも若いうちは振袖で、華やかにお祝いへの参列が喜ばれます。ぜひ積極的に着てください!)。
 
▼訪問着で、披露宴出席用に袋帯を飾り結びしています。

▼(ご参考)カジュアルなお茶席に、色無地に名古屋帯をしめています。
 
▼普段着の着物を気軽に楽しくアレンジしてください。
     
▼洋服ドレス同様に、婚礼衣裳は最も格が高く華やか(掲載写真の色打ち掛けは相良刺繍)
   

TPO

*第1礼装:結婚式、表彰式、記念式典など (未婚女性は振袖/既婚女性は黒留袖・色留袖)(男性は黒の5つ紋付)

■女性の第1礼装の着物と帯

  • 振袖:成人式や披露宴などに。未婚女性が着る格式のある第一礼装です。袖の長さは小・中・大とあります。
    • 柄は着物全体に絵柄のある豪華な絵羽模様。紋つきが正式ですが現在は紋がなくても礼装になります。
    • 帯は格の高い金銀系の糸・柄を使った袋帯を合わせ、華やかに結びます。
    • 帯揚げは総絞り(最近は綸子も)、帯締めは金銀系の糸を使った平組か丸組で、太めのものを。
    • 半襟は刺繍襟で華やかに。重ね襟(伊達襟ともいう)も入れて一層華やかに。
    • 長襦袢は袖の長さのあった色柄物。
  • 黒留:結婚式の仲人や親族の既婚者が参列する時などに。
    • 着物の色が黒。柄は絵羽模様で、紋は染め抜きの5つ紋。
    • 襟の部分が比翼仕立て(重ね襟のように2枚着ているように見せる)になっています。
    • 帯は金銀系の織りの袋帯を。結びは二重太鼓(おめでたいことが重なるように)。
    • 帯揚げ・帯締めは白(金・銀系が入っていればより華やかに)。
    • 留袖には扇子(「末広」)を左前の帯にさします。(末広がりの幸せや繁栄の意味を込めて)
    • 長襦袢は白。

 

  • 色留:黒以外の地色の留袖。染め抜き五つ紋なら黒留と同格。最近は3つ紋、1つ紋が主流。1つ紋なら訪問着のような略礼装として着られて便利。
    • 襟の部分は基本は比翼仕立て。比翼がなければ控えめな色の重ね襟で演出を。
    • 帯は黒留同様、金銀系の織りの袋帯を。結びは二重太鼓。
    • 礼装として着るなら帯揚げ・帯締めは白で。それ以外ならおしゃれに色ものの綸子の帯揚げや平組の帯締めで。(いづれも、金・銀系が入っていればより華やかに)。
    • 礼装なら黒留同様末広を。
    • 長襦袢は白。

第1礼装の履物は草履で色物か金銀系で華やかに。(下駄はNG)
    
■男性の第1礼装の着物と帯

  • 黒無地の5つ紋付に金銀系の糸が織り込まれた絹織りの角帯。
  • 5つ紋つき羽織と縞の(仙台)袴。
  • 足袋・羽織紐・襦袢・雪駄は白。
  • 半襟は基本白(薄い色も可)。
  • 第一礼装では羽織は着たままに。

*準礼装/略礼装:入学式・卒業式・記念式典・正式なお茶席、遠縁や友人の披露宴など(色無地・江戸小紋)(女性は訪問着・付け下げも含む) 
■男女共通:着物

  • 色無地:色を選べば慶事から弔事まで着ることができます。慶事用なら明るい色・光沢ある生地を。弔事用なら光沢のないおさえた寒色系の色(グレーやくすんだ紫など)・光沢のない生地を。上手に中間色を選べば帯や小物の組み合わせ次第で両用も可能。紋は0〜3つまで付けますが、1つ紋が幅広く使えて無難。紋は染め紋・縫い紋どちらでも。刺繍紋の方がよりカジュアルです。
  • 江戸小紋:武士の裃に由来。女性は、袋帯を合わせれば略礼装に。名古屋帯を合わせれば街着・おしゃれ着になります。略礼装なら小物は着物と帯になじむ色ものを選び、帯揚げはつやのある綸子、帯締めは太めの平織りが良さそうです。普段着なら金銀系以外で。男性は、絹織の角帯で。着流しや羽織姿で街着・おしゃれ着に。羽織に袴を履けば略礼装に。

■女性のみ:着物

  • 訪問着:年齢・既婚・未婚に関係なく着られる準礼装。1つ紋をつければ色留に準ずる着物として着られます。紋を入れるかどうかは着る目的や自分の好みに合わせて。
    • 帯は金銀系の袋帯で二重太鼓でも、華やぐような(振袖ほどではない)お太鼓系の飾り結びも素敵です。
    • 帯揚げ・帯締めは(金銀入りで)華やかに。帯揚げは綸子や絞り。帯締めは平組・丸組。着物・帯と同系色で品良くまとめましょう。
    • 長襦袢はおしゃれに。
  • 付け下げ:訪問着の次の格。正装として着るなら袋帯を。飾り結びは少し控えめに。カジュアルに着るなら名古屋帯でおしゃれ着として。
    • 小物は訪問着と同様。色柄によっては小物合わせも個性的にしてもいいでしょう。
    • 長襦袢はおしゃれに。

■女性の準礼装/略礼装(慶事・弔事):小物の組み合わせ

    • 慶事用なら重ね襟を入れて華やかに。「半襟」は刺繍もので華やかにしても可。弔事は一切飾らず無地の白。
    • 帯は慶事なら華やかな袋帯。弔事なら黒。
    • 帯揚げ・帯締め慶事なら(金銀入りで)華やかに。帯揚げは綸子(か絞り)。帯締めは平組がよさそう。着物・帯と同系色で品良くまとめましょう。弔事なら黒(地方によって白の場合も)で、着付けの時の帯の回しと帯締めの房を晴れの着付けと逆にして喪を表します。弔事の長襦袢(および半襟・足袋)は白。

 (弔事についてはここでのみ記載。他はすべて晴れの着物(晴れ着・慶事・祝儀用)についてだけふれています。)履物は草履で慶事は色物か金銀系で華やかに。弔事は黒。(下駄はNG)

■男性の準礼装/略礼装:組み合わせ

    • 着物・羽織とも色無地の0〜3つの紋つきで、紋の数で格を調整(羽織を着たままなので、着物は紋なしで羽織だけに紋を入れるのもあり)。
    • 帯は絹織りの角帯。絹の袴。
    • 足袋・羽織紐・襦袢・雪駄または草履・半襟は、白か薄い色(第一礼装に近いほど白)(下駄はNG)。
    • 色の濃淡でコーディネートしますが、同系色で濃淡の差が少ないほど礼装の品格があります。
    • 着物の生地の素材としては、羽二重(ふっくらとした上質な染めの絹)・お召縮緬(染めの絹)・紬(絹織)の順にカジュアル。

*おしゃれ着・普段着(街着):気軽な/ちょっとしたお出かけ(小紋・紬・木綿・ウール着物など。)
■女性の普段着

  • 帯は名古屋帯。さらにカジュアルに着るなら半幅帯を。小紋に、金銀系の入った名古屋帯をあわせれば、ちょっとしたお洒落着に。 
  • 帯揚げは縮緬のみカジュアルな街着用(&縮緬はその素材感から寒い季節向き)。縮緬以外(綸子・絞り)ならお洒落着でも街着にもOK。
  • 帯締めは平組・丸組なんでも(ただしあまり金銀系でないもの)。細めがよりカジュアルです。帯留めを飾ってもお洒落(帯留めには、三分紐という細い帯締めを使うことが多い)。
  • 小物の色合わせは、着物や帯と同系色だと品良くまとまり、反対色になるような色を選ぶとモダンで個性的な印象になります。
  • 半襟・襦袢・足袋・草履や下駄は遊んでいいでしょう。TPOにあわせて小物をあわせましょう。

■男性の普段着

  • 帯は、絹織りの角帯より木綿の角帯はカジュアルで安価。さらに家着に近いカジュアルには兵児帯を。角帯のみの着姿を「着流し」といいます。
  • 着物+袴(羽織なしの)姿もカジュアルでオシャレです(縞模様の仙台袴はいかにも正装用ですが、それ以外の特に無地系はカジュアルにきこなせます)。
  • 着物+羽織りは少しおしゃれな感じ。着物+袴+羽織はかなりオシャレしている感じです。
  • 半襟・襦袢・足袋も色ものをさまざまに合わせてお洒落を楽しんで。履物は草履・下駄を。(雪駄なら鼻緒は色物を)

     

以後は主に女性の着物周りの話です。
ざっくり
普段着と正装との着付け小物の違い(普段着に必要な小物にプラスするもの)

  • 伊達衿(重ね襟)
    • 振袖、訪問着、色無地などに利用され、衿元に一色加わることで、より華やかな装いができます。
  • 刺繍衿
    • 振袖・訪問着などを着るときに長襦袢の衿に使う半襟のこと。刺繍が施されていることでより華やかに。

です。

  • 帯揚げ」は、振袖は総絞り、黒留袖は白の綸子、色留袖は色の綸子、準礼装は色柄の綸子・絞り、普段着は色柄の綸子・絞り・縮緬など。(夏は生地が絽になります。)
  • 帯締めは、振袖は金銀系の色もので、巾の広い平組か丸組、黒留袖は平織りで白の金銀系、色留袖・略礼装は平織りで金銀系、色無地・訪問着・付け下げは色柄で華やかなものならなんでも、普段着は金銀系以外の細身の色柄ものならなんでも。(夏は夏組のものを。)
  • 足元は礼装は金銀系かエナメルの草履(踵が高いほど正装向き)。ちょっとおしゃれ着なら皮やエナメルの草履を。 普段着は金銀系でない草履ならなんでも。下駄もカジュアルな感じがお洒落です。
  • 足袋は、白の5枚はこぜが正装用。4枚は普段着。最近は普段着用に楽しめる色柄ものも豊富。裏が黒や色のものは汚れが目立ちにくいです(白で汚れが気になる方にはお勧めかも)。足袋ソックスは滑りやすくて歩きにくいですが、最近は心ばかりですが滑り止めゴムが裏についたものもあります(洗うとはがれてしまいやすいので??かも)。

  • 長襦袢の生地は、正装は正絹の白か薄い色。普段着は絹・化繊、冬ならモスリン(ウールの一種)もあたたかいです。夏は麻・絽・紗で涼やかに♪ 普段着の着物なら袖や裾からちらりと見える長襦袢との色・柄合わせも楽しいですし、襦袢の素材を選んで四季を快適に過ごしましょう♪
  • 半襟は、正装は白(場合によって刺繍つき)。すこしお洒落感の強い場面では色の刺繍襟も(振袖は特に)。ふつうは白の塩瀬(つるつる)か縮緬(表面にしぼがある。冬向き)で、素材は洗える化繊でOK。カジュアルなら手ぬぐいもオシャレ。夏は絽。(刺繍のあるものは基本的には正装用です)

最近はこういったしきたりや決まりのようなもの緩やかで、もっと着物を気軽に楽しみましょう!という流れになっています。全く知らないのではなく、知っていてあえてこの組み合わせ・コーディネートしている、というのは、ありだと思います。

夏はあえて、夏着物のような織り柄の浴衣を選んで、長襦袢を着て絽や博多の名古屋帯を絞めて、夏着物のように楽しんでみては? 

時代の変化が顕著に出ているのは振袖と浴衣の着付けです。襟や袖、帯の上にレースを入れたり、ネックレスのようなチェーンをつけたり、本当に自由で、おしゃれと感じることを洋服感覚を取り込んで、何でもやるファッションになっています。 こういったご時世ですから、時には正統派にしっとり、時には(街着や格式のない場面でこそ)いろいろ楽しんでもらえたらと思います。

どれも体験を通して、少しづつ学びながら、一緒に楽しみましょう!

女性の「帯」のこと

帯は大きく分けて3種類(帯の形状の違いでほぼ区別できます)。

  • 半幅帯:帯幅が半分。浴衣や街着に締めます
  • 名古屋帯:街着から軽い正装まで幅広く使えます
  • 袋帯:礼装用で、長さが名古屋帯より長く、金銀系の織りで、袋状(表裏の2枚重ね)になっています

夏物以外、帯は、着物の袷・単衣など時期に関係なく通年共用できます。
着物の格とあわせつつ、かつ、帯で格を調整すると考えてみてください。

普段着の着物と名古屋帯を組み合わせる時に悩んだら「織りの着物に染め帯。染めの着物に織りの帯」を基本としてとらえつつも、あまり気にせず、色柄で組み合わせてみましょう。

半幅帯は、カジュアルな街着や浴衣に使います。半幅には、博多織りや綿素材、最近はポリエステルのものが主流で、両面の色違いを上手に使って結ぶと、何通りもの表情を楽しむことができ、実はアレンジ豊富で奥が深かったりします。最近では浴衣には、昔は子ども用だった兵児帯が大人用にアレンジされて、ふわふわした生地が人気で、流行っています。

*夏の薄物には夏帯(薄物に合わせる紗・絽、つづれ・博多織りの帯)をあわせ、夏用の帯揚げ・帯締めをあわせます。夏帯にももちろん普段着用の名古屋帯と礼装用の袋帯とありますので、着物の格にあわせてください。

女性の帯の区別の仕方

九寸、八寸というのは仕立てる前の帯の幅を表していて、仕立て上がった帯の幅はどちらも八寸(約30センチ)。

  • 九寸帯:仕立てる前の幅が九寸で、帯芯を入れて両端を5分ずつ折って仕立てるので、仕立て上がりが八寸になります。
  • 八寸帯:仕立てる前も帯幅は八寸で、仕立に芯は使わず垂れになる方を約1尺5寸折ってかがり仕立をします(よって仕立てても帯幅は変わらず八寸)。

②帯の柄付けには、お太鼓柄通し柄があり、さらに通し柄の中に全通六通があります。

お太鼓(おたいこ)柄
帯を締めた時、お太鼓にした部分にだけ柄が出るようにできでいます。慣れないうちは、帯を締めた時、きれいにお太鼓の柄を出すのが少しむずかしいようですが慣れてしまえば、お太鼓柄の着物姿は街着らしくもあり、とても素敵です。

通し柄: 六通(ろくつう)柄 と全通(ぜんつう)柄

  • 六通: 全通柄を簡略化したもので、全体の6割に柄がある、胴に巻く部分に柄がないタイプ。
  • 全通: 手先からたれまで帯全体にずっと柄が入っており、六通のものより贅沢な帯ということになります。

*現代の袋帯の多くは六通柄です。

③着物と同様、染め方、織り方、生地、産地の名称・その特徴で、帯を呼ぶことがあります。

など。

金銀糸の入った織りの袋帯が一番格上です。
織りと染の帯を比べると、染め帯の方が柔らかな雰囲気。
織りの帯でも「博多」の名古屋帯はカジュアルになります。

コーディネートのポイント:ぷちアドバイス

  • 1つの着物に帯を替えるだけで印象が変わります。逆に、1つの帯にいろいろな着物をあわせることもできます。
    • 昔は着物1着に帯3本といいました。着物(特に色無地)に合わせる帯の格を変えることで、ある程度TPOに対応できます。
  • 帯揚げ・帯締めがまたアクセントになったり、着物と帯を調和する立役者にもなって、小さいながら重要な役割を果たしてくれます。
    • 帯揚げや帯締めの色選びのヒントは、帯の反対色や、全体を引き締める色、着物と帯を調和させる色、着物の色柄にある一色を選んで。
  • 半衿と足袋は白が一般的ですが、時には、色ものや柄もので個性的な装いを楽しんでみては?

仕立ててみたいなら、本当は着物よりもまず長襦袢のお仕立てをお勧めします。着心地・着易さが違います! 着物でしたら「木綿」の単衣をお勧めします。値段も手頃で自分で洗えて、春と秋に着られます。袷を仕立てるおしゃれの醍醐味は「八掛」選びです。長襦袢同様、外からはちらりとしか見えないですが、八掛次第で着物の印象がとっても変わるのです(昔は年齢の経過とともに八掛の色を変えて、着続けました)。

(以下はまめ知識です。お好きな方は引き続きどうぞ)

生地の産地・織り方・染め方などによって、その技法が優れていたり特徴がある着物は、土地名・染の技法・生地の種類で呼んだりします。 焼き物(陶磁器)にも、有田焼・九谷焼萩焼のように土地名で呼びますよね、それと同じ感覚です。

」とは
 もともと真綿(商品にならない繭からつむぎだした糸)を、糸の段階で染めてから(先染め)織り上げ、反物にした、いくら高価なものであっても、普段着の着物でした。最近は後染めの織物もつくられていて紬の訪問着などフォーマルな紬もあるようです。

着物の中でも、紬には、大島・結城・塩沢・十日町小千谷・米沢・牛首・上代、と土地名で呼ばれたり、土地特有の技法から黄八丈・紅花とよばれる、高価なものがあります。

織りの技法で例えば、ひげのように糸が飛び出した独特の味わいがおしゃれな織りの着物を「ひげ紬」と呼びます。

小紋」とは
 小紋は後染めの反物で作られた着物です。染色技法によって、たとえば江戸小紋・紅型・更紗・ろうけつ・絞り・型友禅 (の着物)などと呼び、それぞれ色や柄行などに特徴があります。

 このほか生地の質感や織り、柄の特徴から、綸子(表面がつるつるの反物)・縮緬(表面に細かいしぼがある反物)・お召縮緬の上質のもの)・銘仙(縞や絣柄。薄地で生地が弱い)・(縞々に透けた織りで夏用)・(薄く透けた生地。夏用)・(かすれたような柄がでるように織ってある。非常にカジュアル)・羽二重(良質の撚りのない生糸を用いて織ったふっくらとつやのある肌触りのよい生地/絹織物)(の着物)と呼んだりします。

以上、代表的な、よく聞くような、思いつくものをあげましたが、いろいろな呼び方があって難しそうかもしれませんが、まずは1つ手にして、そこから少しづつ周りの人の持っているものやお店めぐりしながら、自分のお気に入りを見つけていきましょう!


綸子は光沢があり、風呂敷に使われるような鬼縮緬とは一線を画すように思えますが、実は鬼縮緬だけでなく一越縮緬や襦袢に使われる綸子も本当は縮緬です。でも世間一般では縮緬といえばシボがあるもの、光沢があるものを綸子といいますので、そのように記載しています(厳密なことはいいですよね、ってことで。)ちなみに縮緬と対比して語られる生地が羽二重で、縮緬は強い撚りを掛けた生地、羽二重は撚りを掛けずに織った、ふっくらつやつやと光沢のある贅沢な生地です。

                                                          • -

(以下、帯のおさらい・詳細 他サイトから引用:http://www.ykya.co.jp/index.htm

「織か染か」
 呉服の用語で「織物」というのは、糸の段階で色を染めて織ったもので、「染物」というのは生地に後から色を染めた物を言います。そう言う意味で、「織物」を「先染め」、「染物」を「後染め」とも言います。
 織帯は染めた糸で織った帯。染帯は白生地に後で染めて柄をつけたものです。
 帯は圧倒的に織帯が多いので、他と区別して「染帯」という言葉が良く使われます。染帯は白生地に染め付けますので塩瀬や縮緬が多く使われています。また、紬の白生地に後染めした染帯もあります。
 さて、次は織り方や染め方がそのまま帯の名称として使われている例です。 「綴の帯」や「佐賀錦の帯」などは良く聞くところでしょう。これらは織の種類を指して言っています。「綴の帯」は綴という織の技法によって織られた帯で、「佐賀錦の帯」も佐賀錦という織物によってできている帯のことです。そのような織の技法や生地の名称、あるいは染の技法が帯の名称として用いられているということです。唐織、すくい、紹巴、紗、羅、友禅、ろうけつ、刺繍など、まだまだ書ききれないほどの種類があります。
 次に帯の生地が帯の名称とされる場合です。
 塩瀬の帯という名称は聞いた事があると思います。塩瀬というのは正確には塩瀬羽二重の略語ですが、塩瀬羽二重というのは厚地の羽二重生地のことを言います。塩瀬は染帯の代表的な生地です。塩瀬の生地に染めた帯を塩瀬の帯と言います。また、紬生地の帯を紬の帯とも言っています。
 西陣の帯、博多帯という言い方がありますが、これらは帯の産地を表しています。ご存知の通り、西陣は帯地の大生産地です。西陣という言葉はあくまでも生産地の名称であって品質を表すものではありません。もちろん西陣は帯の生産地としてプライドもあり、品質の保持には努力していますが、高級品も普及品も生産していますので西陣の帯が全て高級品という訳ではありません。
 帯の生産は西陣の他に博多、桐生などで行っています。また、最近は中国でも帯が生産されています。しかし、博多帯という言葉は一つの括りとして使われていますが桐生帯や中国帯という言い方はあまりしないようです。
 博多の帯は経畝織と呼ばれる特徴的な織り方をしますので、博多帯と言えば一つの範疇を形成しているようです。

 最後に「全通帯」「六通帯」という帯の名前について説明します。
 全通と言うのは、垂先から手まで全てに柄がある総柄の帯のことです。これに対して太鼓柄というのは太鼓と腹の部分だけに柄のある帯です。太鼓柄の帯は太鼓の真ん中に柄を出すのが難しいと思われた方も多いかもしれません。全通の場合は全てに柄がありますので、どのように締めても太鼓には柄が出る訳です。もっとも、総柄であってもどのように太鼓に柄を出すか工夫して締めます。
 もう一つ、六通という帯があります。六通の帯は、手の方から1尺の所から2尺5寸から3尺程度柄が抜けている帯です。中には手にも柄のないものもあります。他は柄が総付けになっていますので、帯を締めてしまえば全通と同じようになります。柄の抜けている部分は表に出ませんので、柄を省略しているわけです。より安価に合理的に帯を創ったのだと思います。

以上が帯の種類と名称について説明しましたが、他に「付け帯」という帯もあります。「付け帯」というのは帯を切って太鼓と胴に分けて簡単に締められるようにしたものです。帯はその性質の側面から様々な名称で呼ばれているということを覚えておいて下さい。


 呉服用語は時代と共にその意味が変る、名古屋帯はその良い例です。名古屋帯の名古屋というのは、その発祥の地名からきています。大正時代に服装改良運動というのが起こりました。服装と言うのは洋服ではなくきものの事で、もっと簡単にきものを着れるようにしようという運動だったろうと思います。その時、名古屋女学校の越原さんという人が簡単に締められる帯を発明しました。帯を締める時には胴の部分二つ折りにして胴に巻きつけます。袋帯を締める時の事を考えてみてください。胴の部分を二つに折りますね。越原さんは、予め胴の部分を折って縫い閉じて帯を折らずに締められるようにしたのです。「名古屋仕立」と呼ばれる仕立て方です。この「名古屋仕立て」という言葉も地方によっては「閉じ仕立て」とか他の名称で呼ぶこともあるようです。  結論から申し上げれば、現在名古屋帯の名称で呼ばれている帯、すなわち単太鼓で締める帯の主な仕立て方は胴を閉じる「名古屋仕立」と胴を閉じずに袋帯のように平たく仕立てる「開き仕立」があります。昔は仕立て方の特徴を名称として用いた「名古屋帯」ですが、現在では「名古屋仕立」でない帯も名古屋帯と称するようになった。その名前の変遷は越原さんの考案した名古屋仕立は、丸帯や袋帯ではできません。どちらも厚地の袷帯ですから折って縫い閉じることは困難ですし、保管も大変になります。従って名古屋仕立ができるのは現代で言う所の九寸か八寸帯に限られます。名古屋仕立が流行って九寸帯や八寸帯の仕立て方において名古屋仕立がメジャーになったのでしょう。いつしか九寸や八寸の帯が名古屋帯と称せられるようになり、それも本来の意味とは全く逆の開き仕立の帯さえも名古屋帯と称するようなったのではないかと思います。

 西陣の帯についてもう少しお話しましょう。
 西陣いう名称は1467年の応仁の乱の時に西軍の山名宗全が陣を張ったことに由来する事はご存知だと思います。実は西陣という地名は無く、住居表示もありません。京都のこの辺り、というような名称なのですが、織物の産地として広く名が知られています。織物の町になったのは応仁の乱より遥か昔の平安時代に織物職人が住んだ事に始まるらしいのですが、その伝統は現代に到るまで伝えられています。  西陣織と一口に言いますが、西陣織という特殊な織物がある訳では有りません。西陣で織られる織物は全て西陣織です。西陣帯というのも同じで、西陣で織られる帯は全て西陣帯と言って差し支えない訳です。西陣は帯の大生産地ですから、美術品と言えるような高級品から安価な普及品まで織っていますので、西陣帯というブランドが、その帯の品質、価格を表すものではないことは先に申し上げた通りです。 しかし、西陣では西陣織の品質を保持する為に西陣織工業組合という組合を組織しています。西陣で機を織っている機屋で組織している組合です。加盟している機屋の織った帯にはこのような証紙が貼ってあります。(写真3)金色の証紙は正絹、絹100%を表しています。ただし、これには付帯条項がありまして、「金糸、銀糸も正絹とみなす」ということになっています。西陣織では金糸、銀糸、金箔、銀箔を多用しますので、このような取り決めがなされています。
  さて、この証紙、左側の下に番号がついています。これは組合加盟の機屋番号です。組合に加盟している機屋には固有の番号が与えられ、証紙にはその番号を付ける事になっています。この番号は、その帯の出所を表すものですからこの部分をカットして流通する事も禁じられています。 機屋の番号は加盟順に付けられていますので番号が若い機屋は昔から組合に加盟している老舗ということなのでしょう。確かに若い番号の機屋は老舗が多く良い帯を創っていますが、それだけで良い帯かを判断することはできません。1000番台、2000番台の機屋さんでも創意工夫をこらして良い帯を織っている所もたくさんあります。 復織で有名な龍村美術織物という機屋は644番です。どちらにしましても、良い帯というのは、自分の目で見て判断される事が肝要かと思います。

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(以下、着物のおさらい・詳細 他サイトから引用:http://www.ykya.co.jp/index.htm
きものを格づける要素というのは一つではなく幾つもの要素があります。  まず、一番めに「紋」があります。
 紋の数は多いほどフォーマルで、「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」があります。黒留袖、喪服は五つ紋。色留袖は三つ、訪問着、付下げ、色無地は一つ紋が一般的です。黒留袖は五つ紋に決っていますが、色留袖に五つ紋、一つ紋、色無地に三つ紋を付ける人もおりますし、つけて悪いと言う決まりはありません。
 昔は紋というものを非常に大切にしたようで、紋付の振袖というのは昔は一般的だったようです。色留袖も昔は五つ紋も結構あったようですが今は三つ紋が主流で、三つ紋では仰々しいというので一つ紋の色留袖も結構多い。紋の数は少なくなる傾向なのかもしれません。
 訪問着はそれ自体フォーマルの要素がありますので、紋はつけなくとも構いません。もちろん付けても構いません。訪問着と一口に言っても全体に柄のある総柄の訪問着から、柄の軽いものまでいろいろあります。背中の紋の入る部分に柄が密集している場合ですと紋をつけるのは憚ったほうが良いと思いますし、背中が寂しいようでしたらアクセントとして紋を付けても いいでしょう。
 また、紋には「抜き紋」と「縫い紋」とがあります。これもきものの格にかかわる要素です。抜き紋は縫い紋よりも格が高く、縫い紋はおしゃれ紋とされています。留袖に縫い紋はしませんし、同じ色無地でも抜き紋をした場合と縫い紋をした場合では格が違ってきます。もちろん縫い紋はおしゃれ紋といっても紋は紋ですからフォーマルには変わりはありません。 「抜き紋」「縫い紋」の他に「張り紋」「書き紋」というのもあります。 「張り紋」は抜き紋した生地を貼り付けるもので、「書き紋」は色を抜かずに胡粉で紋を書いたものです。いずれも抜き紋の代用と言えるもので、染が堅牢だったり、生地が弱っていたりして色が抜けない場合、また貸衣装の様に一回限りの場合などに使われるもので、格としては抜き紋と同格と思って差し支えありません。
 紋の種類にはもう一つ、「日向紋」「陰紋」というのがあります。  通常「五三桐」と呼ばれる紋はこの紋です。そして、この「五三桐」のバリエーションとして「蔭五三桐」「中蔭五三桐」「総蔭五三桐」があります。これらは蔭紋と呼ばれるもので、蔭紋に対して通常の紋は日向紋と呼んでいます。家紋として正式なのはあくまでも日向紋で、蔭紋はオシャレ紋とされています。紋をあまり目立たせたくない時や、少し格を落として着たい時など蔭紋が使われます。 しかし、稀に蔭紋を正式な家紋としている家もあります。その家では蔭紋が正式な紋ですから黒留袖にも蔭紋を入れています。なぜそうなのかは分かりませんが、その昔主君より紋を賜ったとか、暖簾分けされたとかの謂れがあるのかもしれません。
 以上が紋についてです。    

  次に絵羽という要素があります。この絵羽という概念は日本のきもの独特のものかも知れません。
 きものは直線裁ちを基本として、身頃は四枚の生地を縫い合わせています。これに二枚のおくみが付くのですが。これをカンバスまたは屏風に見立ててここに柄を描くわけです。縫い目を越えて絵を描く、これが絵羽です。絵羽付けになっているきものを絵羽物と呼んでいます。留袖、訪問着、付下げ、いずれも絵羽物です。コートや羽織も絵羽付けの物は絵羽コート、絵羽織と言います。同じコートや羽織でも絵羽物は格が高い物とされます。
 この絵羽か否かというのは、きものの格付けに決定的な意味を持っています。絵羽にも重いもの、軽いものがあります。とりあえず重い絵羽が訪問着、軽い絵羽が付け下げと思ってください。小紋とは違って全体で一つの図柄を構成しています。極めて軽い絵羽柄を昔はサンポ着と言われましたが、普段に着ることは考えられません。この絵羽という要素はきものの格付けにそれ程重い役を果たしているわけです。

 次にきものの材質というのも格付けの要素となります。
 きものの素材としては絹、綿、麻、ウールなど、他に化学繊維も用いられています。もちろんご承知のように絹が最も格式が高いとされています。他の素材、綿や麻、ウールは通常普段着とされています。ただし男物の場合、夏物に麻の紋付が晴れ着として使われます。
 絹が格式が高く、綿や麻は普段着であることについては説明を要しないと思います。ただし、最近はポリエステルやレーヨン、アクリルなどのいわゆる化学繊維のきものがありますが、これらは例外的なので今回は話からはずします。化繊のきものについては話すと長くなりますので後日機会がありましたらお話する事にします。
 絹が一番格式が高いと申し上げましたが、その絹織物にも様々な種類があります。縮緬や御召し、紬など、それらは同じ絹でも織り方製法によって様々な顔となります。そして、それら生地の種類によっても格が変わってきます。
 絹織物は大きく分けて羽二重、縮緬、紬があります。きものの生地に最も多く使われるのは縮緬です。この「縮緬」というのは誤解される呉服用語の一つなのですが、「ちりめん」の本当の意味は、強い撚りをかけた糸、これを強撚糸といいますが、この強撚糸で織った絹織物のことを言います。ちりめんと言いますと、皆さんが真っ先に思い浮かべるのは風呂敷に使われる生地でしょう。表面にデコボコのシボのある生地を思い出すことでしょう。この生地は鬼ちりめんと言いまして、数ある縮緬の一つにしか過ぎません。一越縮緬ですとか変り無地縮緬だとか縮緬には沢山の種類があります。襦袢地に使われる光沢のある綸子も実は縮緬です。御召も「先染縮緬」と呼ばれ、縮緬の一種なのですが、縮緬とは別に扱われるのが一般的です。
 これらの生地の中では羽二重が格の高い物とされています。しかし、女物のきもので羽二重はほとんどありません。一昔前までは喪服が羽二重地でしたが、今はほとんど縮緬系に代わっています。
 縮緬の中では綸子や一越などシボが低くサラッとしたものが格が高いとされています。これに対して鬼縮緬などのシボの高い物、御召や紬は普段着とされています。ただし、これらは一つの目安に過ぎず紋や絵羽のような決定的な要因ではありません。鬼縮緬の訪問着も創られていますし、綸子や一越の小紋も創られていますので、生地の種類は格を決める多くの要素の中の一つと言うところです。

 染色法もきものの格に影響します。
 友禅や絞り、藍染、更紗、その他数多くの染色法がありますが、それらの中には普段着には余り用いられないものや、普段着向けのものがあります。
 例えば藍染は一般に普段着とされています。もともと野良着に使われた藍染ですから晴の場では着ないということでしょう。同じく絞りや更紗も普段着とされています。振袖に絞りが用いられたり例外もあります。

 きものには金糸や銀糸、金箔銀箔が用いられます。
 金や銀が用いられているのは晴れ着と思って差し支えないようです。金は古今東西装飾の王様とされてきました。富や権力、神や仏の象徴として儀式に用いられてきましたので晴を象徴しています。  普段台所で仕事をする人が金箔や金糸の入ったきものが似つかわしくないのはお分かりいただけるでしょう。

 以上、きものの格を決める要因ということでお話して参りました。少々理屈っぽい話だったと思いますが、きものの格と言いますのは、例外も多く今お話した事が絶対ではありませんし、それらが複雑に絡み合って形成するものですから一概に杓子定規に決められるものではありません。 紋のないきものでも総柄の訪問着ともなれば充分に晴の場で紋付と肩を並べる事ができますし、手描きの小紋の振袖などは絵羽の振袖を凌駕するものもあります。 今日お話したきものの格付け要因というのは頭の片隅に置いていただきたいと思います。そして、できれば今日お渡しした資料は家に帰ってもう一度目を通した上で破り捨てていただきたいのです。と申しますのは、今きものを着る人は余りにTPOを気にしすぎるんじゃないかと言う気が致します。もちろん常識を無視したようなきものの着方はいけませんが、TPOを気にする余りきものを着る機会さえも失っているのではないでしょうか。 TPOを気にする余り、何か拠り所を探しているようにも思えます。


追記『付下げと訪問着の違いについて』

  付下げと訪問着の違いについては良く聞かれます。
「付下げと訪問着はどう違うのですか。」
「訪問着を着てくるように言われたのですが付下げでは悪いのですか。」
と言った質問が後を絶ちません。
 訪問着と言えば、総絵羽の晴着という事は御存知だと思います。一方付下げと言うのは分かり難いきものです。きものの用語辞典で「付下げ」を引いてみると次のような説明に当ります。
「付下げ・・・全ての柄が上向きに配されたきもの。」
 この説明でなるほどと納得できる人は皆無ではないでしょうか。
 しかし、 「全ての柄が上向き」  この言葉は付下げの原初の意味を正確に表しています。
 付下げという形式、用語ができたのは昭和30年頃らしいのですが、その当時の付下げはこの言葉に忠実なものでした。

 付下げは当初小紋の延長線上にできたものです。

 小紋というのは柄が全体にバラバラに配されています。多くは型で染められますので繰り返し柄となります。柄は上も下もなく、人形柄など上下のある柄は上向きであったり下向きであったりして配されます。従って仕立て上がった小紋は上向きの人形や下向きの人形が配されることになります。

 全ての柄が上向きの小紋が出来ないかと考えた人がいたのでしょう。全て同じ向きに柄を配せば全ての人形は上向きになり頭に血の上る人形はいなくなります。しかし、きものは前身頃、後身頃が一枚の布で仕立てますので前身頃では全て上向きになっても後身頃は全て下向き、後身頃の人形は全て頭に血が上ってしまいます。袖も同じです。前が上向きならば後は全て下向きとなってしまいます。

 そこで考案されたのが付下げという形式です。前身頃の上向きの柄を肩山に沿って反転させる事により柄は全て上向きになります。
 一反の反物に予め裁つ場所を決めておいて柄付けを考えながら全ての柄が上向きになる小紋、これが原初の付下げです。今では付下げ小紋の名で呼ばれています。
 これで、「全ての柄が上向きに配されたきもの」の意味がお分かりいただけるでしょう。しかし、現在今申し上げたような付下げはほとんど見かけなくなりました。私も問屋へ行ってもたまに見かけるだけでほとんどと言ってよいほどお目にかかりません。      
 それでは今付下げと言われているきものはどんなきものなのでしょうか。
 当初創られた付下げは小紋の延長でしたが、反物を裁つ位置、縫い合わせる位置は決っています。おそらく頭の良い人が考えたのでしょう。付下げに繰り返しの小紋柄を付けずに柄を転々と配して絵羽柄を創りました。初めは縫い目に跨らないものだったろうと思います。(付下げパターン?)この形式の付下げは仕立て上げれば小紋ではなく立派な絵羽となります。丸巻きの反物のまま染められるので訪問着よりも安価に染めることができます。
 その後改良が加えられて前身頃とおくみだけは縫い目に跨って柄を配したもの(付下げパターン?)、更に身頃は柄が繋がり肩も柄が繋がったもの(付下げパターン?)が出てきました。
 こうなりますと、訪問着と付下げの区別がつかなくなってしまいます。手の込んだ訪問着ですと、胸の柄、袖から剣先を跨いで前身頃、襟まで柄が繋がる物もあります。これは付下げでは真似ができません。しかし、全ての訪問着がそうではありませんので剣先を跨ぐ胸の柄は訪問着の必要充分条件とは言えません。
 訪問着と付下げの境をどこにするのかというのは定説がありません。原初の付下げ、いわゆる付下小紋を付下げとしている人もいます。付下げパターン?をもって付下げとする人も多いようです。しかし、呉服屋、問屋、染屋、それぞれがそれぞれの尺度を持っていますので、どこからが訪問着、どこからが付け下げとは決められないのが現状です。
 私が勤めていた問屋では、製品分類上、単純に仮絵羽(きものの形に仮縫いされたもの)したものを訪問着、丸巻きの物を付下げとしていました。それは製品管理上便宜的に分類したもので柄の重さには関係ありませんでした。
 私は訪問着の絵羽柄の軽いものが付下げですと説明する事にしています。それは万人に受け入れられる定義ではありませんが、付下げと訪問着の境がはっきりとしないと言う事を認めたうえでは最良の仮説だと思っています。

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以上のテーマについて総合的に参考になると思うサイト.実際参考にさせていただいたサイトもあります。絵や写真があってより分かりやすいと思います。(検索しはじめたら上げきれなくなりました。。今は丁寧に説明してくださるサイトが沢山あるんですね。)

トータルで参考になりそうに思ったページ3つ
http://www.kimonoclub.info/
http://www.sgm.co.jp/kituke/06aeini/gara/
http://www.kanaiya.co.jp/mame/

着物の産地 http://www.ryuumu.co.jp/~suzu/santi.html
格の一覧表 http://www.geocities.co.jp/Milano/2323/kituke/kaku.html
用語集 http://www.nuistyle.com/swatches/terms.html
着物の名称(別ページに帯の解説も)http://www4.tokai.or.jp/yukikimonosaron/kimonosyurui/syurui.htm

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